6月22日(水)中高礼拝 説教

2022年6月22日(水)立教女学院 中高礼拝 ルカ9:18-24

「23 私に付いて来たい者は、自分を捨て、日々、自分の十字架を負って、私に従いなさい。24 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、私のために命を失う者はそれを救うのである。」

このイエス様の言葉の意味を学び、少しずつ理解してゆくプロセス、それがイエス様と共に歩むことであり、クリスチャンという生き方です。

「十字架を負う」というのは、最初のイエス様の弟子たちに与えられた、具体的な命令でした。イエス様は弟子たちの群れに、迫害者に武力で立ち向かい、敵を打ち破ることを諦めるようにと命じたのです。

生まれながらの人間は、自分に悲しみをもたらした者が悲しむことを望み、自分に不幸をもたらした者が不幸になることを望み、自分に苦しみをもたらした者が苦しむことを望みます。生まれながらの私たちは、敵のために祈ることなどできません。敵が赦されることなど受け入れられません。

ましてや、敵が祝福されることを喜ぶことなどできません。十字架を負って、キリストに従うよりも、敵を滅ぼすことを私たちは望みます。

しかし、それは命の道ではなく滅びの道であり、敵を滅ぼして自分の命を守ろうとする者は、自分の命を失うことになる。そうイエス様は言われるのです。

ロシアのウクライナ侵攻を機に、今の政権は、防衛費をGDP比1%程度から2%へと倍増することを目論んでいます。また政府は、4兆円超の軍事費を上乗せすることによって、敵基地攻撃能力を保有することを視野に入れています。

しかし、端的に言って、軍事力強化によって、日本は今までよりも遥かに危険な国になります。なぜなら、日本は海岸線に沿って、54基もの原発を並べている国だからです。

ロシア軍のウクライナ侵攻の中で、世界を最も驚かせたのは、ウクライナのザポリージャ原発が攻撃対象になったことでした。原子力発電所の管理棟は完全に破壊され、放射性物質が空気中に大量放出される大惨事となってもおかしくない、深刻な事態に陥りました。

今や、プーチン大統領がウクライナを世界地図から消し去って、ロシア帝国の中に取り込むことを目指していることは、公然の秘密です。

防衛費の増加を続け、敵基地攻撃能力の保有を目指す日本の存在は、近い将来、ロシア、中国、北朝鮮に、第2、第3のプーチンを生み出す引き金となるでしょう。

イエス様は、この世で支配を望む者は必ず、闇の力と手を組むのだということを知っていました。この世を支配したいという願望と狂気とは表裏一体、コインの裏表です。

ロシア、中国、北朝鮮に第2、第3のプーチンが現れたなら、その人物が日本を世界地図から消したいと思ったとしても、何の不思議もありません。そして、日本を世界地図から消すことは、ウクライナを世界地図から消すことよりも、遥かに簡単です。

なぜなら、日本中の原子力発電所は、軍事攻撃のターゲットになることを全く想定していないからです。東日本と西日本で、複数の原発が同時にミサイル攻撃のターゲットとなれば、日本列島全体が人の住めない土地となるでしょう。

ロシア、中国、北朝鮮といった核保有国に囲まれた日本に、軍事力で安全を保障する道など無いのです。

「平和」をどう作るかということを考える上で、皆さんが絶対に知らなければならないことがあります。それは、「この世で自分たちを統治する者が、民族的同胞である必要などない」ということです。

イエス様の弟子たちは、イスラエルの敵であるローマ帝国を滅ぼしてくれる、有能な軍事指導者であり、イスラエルに過去の栄光を回復してくれる王としてのメシア、救い主を求めていました。しかしイエス様は、ローマ帝国の転覆を目指すメシアではありませんでした。

パウロはユダヤ人でありながらローマの市民権を持っていました。パウロの異邦人伝道を可能にしてくれたのは、ローマ帝国に張り巡らされた陸路と海路でした。

江戸時代、日本列島と呼ばれる場所で生きているクリスチャンにとって、最も危険な敵は外国人ではなく、クリスチャン絶滅を政策に掲げる、民族的同胞の支配者でした。

皆さんがこの学校から巣立ってゆくときには、日本で、そして世界で、平和を作る者となってください。

そのために、ここで学んでいる間に、平和を作る道を、イエス・キリストから学んでください。