11月13日 創立75周年記念礼拝 説教

2022年11月13日(日)スコットランドのマーガレット日 箴言 31:10-13, 25-31; IIテモテ 1:1-7; マタイ 13:44-46

今日、共に集められて、主の守りと導きと大きな祝福の中で、聖マーガレット教会創立75周年記念礼拝を献げることができる恵みを、心から感謝しています。

マーガレットの名を冠する双子の姉妹、St Margaret’s School(立教女学院)と聖マーガレット教会を生み出したのは、アメリカ聖公会の宣教師たちでした。

1877年設立の St Margaret’s Schoolは、築地の聖路加病院と同じ敷地内にあった校舎が関東大震災で全壊し、一旦、46年でその歴史を閉じました。

震災の翌年、1924年に発行されたアメリカ宣教団の機関紙、The Spirit of Missions の第89号には、St Margaret’s Schoolが「46年に渡る奉仕の業を終える」と記されています。

1923年9月1日に巨大な地震が東京を襲った時、St Margaret’s Schoolの校長であったMiss Haywoodは、校友会のために大阪に向かう汽車の中にいました。

彼女は大阪で集まった学校の卒業生たちにこう言って、学校再建のための募金活動を迫ったそうです。「あなたたちは震災を免れたのだから、私たちの学校を再建するために資金を集めなさい。」

その言葉に従って卒業生たちは募金活動を開始し、1924年のはじめまでに2万円の寄付金を集めました。ちなみに The Spirit of Missions の記録によれば、当時、女学院を卒業して教員として働いていたある女性の給料が、月150円だったそうです。

2万円というのは相当な額ですが、当時のドル円レートで換算すると、約8,200ドルで、学校再建の資金としては到底足りません。St Margret’s School が再建されるか、そのまま閉じることになるのか。それは、宣教師たちを派遣していた、アメリカ本国の教会の決断にかかっていました。

そして、生徒、卒業生、教員たちの祈りと、宣教師たちの弛むことのない説得の努力が実を結び、アメリカ聖公会宣教団が、学校再建資金のための献金を教会に呼びかけました。

その結果、1924年の9月には現在の土地を購入し、突貫工事で仮校舎も造られました。土地購入と学校再建資金のためにアメリカ聖公会から送られた献金は、37万5千ドルにのぼりました。

学校施設の設計を考えるときに最も注意が払われたのは、アメリカの教会が示してくれた宣教精神を、いかに体現するかということでした。その中心に据えられたのはチャペル、現在の聖マーガレット礼拝堂です。

このチャペルに込められた期待は、1926年発行の The Spirit of Missions の第91号に、こう記されています。

‘This chapel, it is hoped, will minister not only to the students of the school but to a rapidly growing suburban population in the neighborhood.’ 223

「願わくは、このチャペルが、学校の生徒たちだけではなく、近隣において急激に増加している郊外の人々にも仕えるものとなるように。」

生徒たちだけではなく、地域の人々への宣教のために仕える器となるように、という祈りと願いが込められて、聖マーガレット礼拝堂が建てられたということがよくわかります。

戦後に、聖マーガレット礼拝堂に集まる教会が生まれたのは、偶然ではありません。それはむしろ、学校再建のために莫大な献金をささげてくれた、アメリカの教会の祈りが聞かれる出来事だったのです。

さて、私たちは「過去を振り返りつつ未来へ」というテーマを掲げて、創立75周年記念の企画を進めてきました。言葉を変えれば、私たちは、これから進むべき道を見出すために、過去を見つめます。

私は、率直に言って、聖マーガレット教会だけではなく、東京教区全体が、日本聖公会全体が、そして恐らく日本中の教会が、関東大震災のときのような、再建の必要に迫られていると思います。

物理的な建物の崩壊とは違いますが、これまでの教会の在り方、これまでの教会組織が、もはや維持できないことは誰の目にも明らかです。しかし、一つのシステムの崩壊は、教会の終わりではありません。むしろそれは、本当に大切なものを再発見し、新たな道を見出すためのチャンスです。

そもそも、Anglican Communionという教会が生まれたのも、独立国となったアメリカで、植民地教会としての旧体制が維持できなくなったためです。

独立国となったアメリカの教会のために主教を按手し、それによって Anglican Communion という教会を生み出したのは、スコットランドの、Scottish Episcopal Church という小さな小さな教会でした。

マーガレットは11世紀のスコットランド王妃です。彼女は、飢えている人、悲惨な状況に置かれている人を見過ごしにすることのできない女性でした。

マーガレットは毎朝、自分が朝食を摂る前に、みなしごや物乞いの子どもたちを腕に抱いて、食事を与えました。彼女は、自分に与えられた富は、貧しい者に仕え神の栄光を現すために与えられている、と信じていました。そのため、彼女は与えることを惜しみませんでした。

彼女は巡礼者や物乞いの足を洗い、降臨節と大斎節の季節には、300人の貧しい庶民を宮廷に招いて祝宴を開き、マーガレットと夫のスコットランド王マルコム三世が、給仕をつとめました。

マーガレットは毎日ラテン語で聖書を読み、多くの時間を読書にあてる知的な女性であり、知的なクリスチャンでした。

アメリカ聖公会から派遣された宣教師たちが、どのような女性を育て、生み出すことを願って、学校に St Margaret of Scotland の名を冠したのか、もはや説明の必要はないでしょう。そして、私たちはそこから生み出された教会なのです。

アメリカ聖公会総裁主教のMichael Curry は、「教会は組織じゃない。教会は Jesus Movement、イエス運動なんだ」と言います。

Jesus Movement に拠点は必要ですが、土地と建物に縛られれば、movementはmovementでなくなります。教会が Jesus Movement であるならば、運動員、activistsを生み出し、育てることが、何よりも重要です。

現在、教会が直面しているすべての問題の根源にあるのは、Jesus Movementの担い手を生み出し、育てることに失敗してきたという現実です。Jesus Movementが終わりを迎えた時に残るのは、教会という名前だけがついたハコモノです。

しかし聖霊は、私たちを解き放ち、自由にしてくれます。

願わくは、私たちを招かれた主が、私たちの心を mission spiritで満たし、経済的にまた肉体的に最も傷つきやすい人々に仕え、暴力に傷ついた世界を癒し、平和を作る Jesus Movement として駆り立ててくださいますように。