
6月21日(水)中学校礼拝 マタイ 9:35-10:8
今朝読まれたマタイ福音書の背後にある教会、福音書の著者が所属していた教会は、多数派のユダヤ人から排斥された、超少数派のユダヤ人共同体でした。
イエス様が語った言葉も、イエス様の働きも、イスラエル社会の中心にいる人たち、主流派のユダヤ人には受け入れられませんでした。
しかし「羊飼いを持たぬ羊のよう捨て置かれ、ボロボロになった人々」にとって、イエス様の言葉と働きは、「喜びの知らせ」、「希望の光」となりました。
今の日本社会の状況は、イエス様の時代のイスラエルに、ますます近づいています。
過去の栄光にしがみつき、世界の変化に目をつぶり、既得権益にしがみつく人々が、今も日本社会の中心に居座り、「主流派」を構成しています。
日本経済は、リスクを伴う開発投資を回避してきたため、innovationが起こらず、世界の変化についていけなくなりました。その結果、国際競争力を失い、売り上げは減少の一途を辿っています。
ところが奇妙なことに、国際競争力を失って、売り上げが減少を続けているにも関わらず、大企業の多くが、過去最高の利益を記録し続けています。
内部留保が積み上がり、役員報酬が上がり続け、富裕層の資産も増え続けています。
なぜそんなことが起きえるのか。それは、非正規雇用を無限に拡大することで賃金を抑制し、中小企業に値下げを強要し、大企業を支持母体とする政権から税制上の優遇措置を受けているからです。
実は消費税は、大企業と富裕層に対する税制優遇措置によって生じる減収分を補うために、「直節税と間接税の比率是正」という建前で導入されました。
他方、国民全体の家計収入の指針となる世帯あたりの年収中央値は、ピークだった1995年の550万円から、2020年には440万円まで下落しています。
また日本では、実質的に塾や予備校などの受験産業に教育が乗っ取られているために、経済力と教育レベルが直結しています。
それにも関わらず、日本のGDP(国内総生産)に占める教育関連の公共支出は、2018年のデータで、OECDに加盟する42カ国中最低(アイルランドと並ぶ)の2.8%です(平均4%)。
富裕層と貧困層の二極化が進み、かつては「当たり前」と思われていた、学業を終えて就職し、結婚して子どもを育てるということが、今や、ごく一部の特権階級にのみ許される贅沢となった。それがこの国の現実です。
イエス様が、羊飼いを持たぬ羊のよう捨てられ、ボロボロになった人々を癒すために弟子たちを遣わされたように、
皆さんも、「主流派」に見捨てられ、生活が立ち行かなくなる人々を生み出し続ける世界を癒すために、この学校から遣わされて行ってください。
