9月6日 中学校礼拝 説教

9月6日(水)中学校礼拝 説教

マタイ 16:21-27

今朝の聖書朗読の冒頭は、イエス様が自分の死を予告したという話で始まっています。しかし本当に重要なポイントはそこにはありません。

イエス様が十字架につけて殺されたのは紀元後の30年です。マタイの福音書が書かれたのは紀元後の80年から90年の間です。

実際の出来事から4,50年も後に書かれたものは、「予告」としての意味を持ちえません。

今朝の聖書朗読の中で重要なのは、「自分の命を救おうと思う者は、それを失い、私のために命を失う者は、それを得る」という言葉です。

ペトロを含め、イエス様の弟子たちは皆、イスラエルを支配するローマ軍を蹴散らし、ダビデ・ソロモンの時代の栄光を回復してくれる有能な軍事指導者としての王を、メシアとして待ち望んでいました。

いつの時代も、特に多くの人々の中に不満が高まっている時、人は力によって世界を支配し、敵を滅ぼし、復讐を実現してくれる「英雄」の登場を期待します。

しかし、それは命の道ではなく、死の道です。

支配者は、政治家は、いつもこう言います。「自分たちを守るために、敵にやられる前に、敵を滅ぼすんだ」と。

ロシアのプーチン大統領はまさに、自分たちの命を守るために、敵に攻撃される前に、敵を滅ぼす必要があると言って、ウクライナへの軍事侵攻を開始しました。

彼が始めた戦争は、何十万というウクライナの人々とロシアの人々に、まったく必要のない苦しみと、まったく無意味な犠牲を強いた上、多くの人々に早すぎる死を課すことになりました。

ロシアでは今、病気の治療が必要な50代の男性までもが徴兵され、人の盾として殺されるためだけに、最前線に送られています。

しかしロシアで起きていることは、対岸の火事ではありません。それは今、現在進行形で、この国で進んでいることです。

この国の政府は、ますます多くの税金を取り立てて軍事費の倍増にあて、敵地攻撃能力を手に入れるといって、アメリカからポンコツ兵器を超高額で買い取ろうとしています。

その裏では、セーフティーネットを破壊し、多くの市民を貧困化させながら、富裕層への富の再分配が進んでいます。

皆さん、最も危険な敵はいつも、「外」ではなく「内側」にいることを知ってください。プーチンの道も、日本政府の道も、死の道です。

では、命の道はどこにあるのか。それはイエス・キリストが語った、神の国の民としての生き方の中にあります。互いに仕え合うことの中に、互いに命を与え合うことの中に、命の道があります。

皆さんがこの学校で過ごす時が、命の道と死の道を識別する知恵を身につける時となりますように。