10月4日(水)高校礼拝 説教
マタイ 21:28-32
「はっきり言っておく。徴税人や娼婦たちの方が、あなたたちより先に神の国に入るだろう。」
イエス様がこう言っている相手は、当時のイスラエル社会のエリートたちです。
彼らは皆、自分たちは正しい生き方をしているから、神の祝福を受けているんだと信じていました。
指導者としての地位も、経済的豊かさも、健康も、自分の正しさの見返りなんだと思っていたんです。
自分の正しさを信じて疑わないイスラエル社会のエリートたちは、イエス様が多くの人々の病を癒しても、悪霊を追い出しても、どんなに奇跡的な業を行っても、そこに神の働きを見ることはありませんでした。
むしろ、徴税人や娼婦たちと一緒に食事をして、彼らの友となったイエス様の姿を見て、「徴税人や娼婦たちの仲間だ」と言って嘲笑していました。
私自身も、子ども時代に何度か、イエス様と似たような経験をしたことがあります。
私が小学生になるかならないかの頃、母が二度目の離婚をし、母子家庭となりました。
その直後、小学校1年のときのことですが、それまで兄弟のように仲良くしていた従兄弟の父から、こう告げられました。
「父親がいないような危ない家の子どもと、うちの子どもを遊ばせるわけにはいかないんだよ。今後はうちの子どもに近づくな。」
私にそう言った叔父は、母のすぐ下の弟ですが、彼にとって私は、娼婦の子どものような存在だったんです。
しかしイエス様は、自分たちの正しさを疑わず、自分たちの恵まれた環境は神の祝福なんだ、そう思っていたエリートたちに対して、「神の国に入っているのは徴税人や娼婦たちの方であって、お前たちではない」、そう言ったのです。
母子家庭の子どもをバカにする権利など、誰も持っていません。どれほど自分は正しい生き方をしていると信じていようが、その人に娼婦の子を蔑む資格などありません。
むしろ、いつの時代も、どこの世界でも、生きることに精一杯の人たちは、「自分は正しいから恵まれているんだ」と思っている人たちに、特に自分が正しいと思っている男たちに、踏み躙られ、更なる苦しみを負わされています。
日本では7人に1人の子どもが貧困状態にありますが、一人親家庭とその子どもたちが置かれている状況は更に過酷です。ひとり親家庭の50.8%が貧困状態で、その内の9割は母子家庭です。
そして母子家庭の母親の9割が、離婚した元夫からの養育費の滞納を経験しています。私の母も、二人の元夫から、一切経済的支援はありませんでした。
イエス・キリストと私から、皆さんにお願いです。
自分の正しさを疑ってください。常に、疑いの余地を残しておいてください。
そして、ほんの少しでいいので、正しい人たちに蔑まれながら、地を這うように生きている人たちに想いを寄せてください。
そのとき、世界の見え方が変わり、イエス様の言葉が聞こえるようになるはずです。