聖霊降臨後第2主日 説教

2025年6月22日(日)聖霊降臨後第2主日

イザヤ65:1-9; ガラテヤ3:23-29; ルカ8:26-39

 先週の金曜日以降、世界の目はイランに注がれていますが、私たちはイランという国について、ほとんど何も知らされていません。

欧米でも日本でも、メディアでまったく取り上げられることはありませんが、イランには8千人から1万2千人のユダヤ人コミュニティーが存在します。イラン全土には100のシナゴーグがあり、その内の31は首都テヘランにあります。

イランのユダヤ人コミュニティーは、中東地域で2番目に大きな規模で、その歴史は約2700年前まで、バビロン捕囚の時代にまで遡ります。パレスチナにシオニスト国家が現れるまで、イランのユダヤ人コミュニティーは、中東地域最大のものでした。

 ちなみに、イランには200の教会があり、30万人のクリスチャンもいます。

 イランはシオニスト国家の存続を認めてはいませんが、かと言ってパレスチナからすべてのユダヤ人を追放しろと言っているわけでもありません。

イランは、欧米諸国のように、シオニズムとユダヤ教を混同するようなことはしません。シオニスト国家が解体されるべきだというイランは、パレスチナのユダヤ人を皆殺しにしろと言っているわけではないんです。

 むしろイランは、イスラム教徒も、ユダヤ人も、クリスチャンも等しく、権利と尊厳を守られて生活できるような、1つの民主的政府をパレスチナに創設するようにと求め続けています。

要するに、イランは、国際連盟の下でパレスチナが大英帝国の委任統治領となった時、拘束力を持つ国際法によって定められた方針を遵守するようにと求めているだけです。イランは、シオニスト・アパルトヘイト体制の解体と、民主主義的政府の創設という、極めて真っ当な主張をしているだけなんです。

 さらにイランは、中東全域の非核化を求め続けています (Middle East Nuclear-Weapon-Free Zone: MENWFZ)。

 イランは、シオニスト国家が核兵器を廃棄すれば、自分たちは核開発を放棄すると、繰り返し繰り返し言ってきました。極めて理性的で、公平な主張です。イランは核不拡散条約を批准し、IAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れ、シオニスト国家が核兵器を放棄すれば、軍事目的の核開発を完全に放棄すると言い続けてきました。

 他方、シオニスト国家の側は、約400発の核弾頭を保有していますが、核不拡散条約も批准せず、国際原子力機関の査察も一切受け入れていません。

先週、14日の土曜日には、イランとアメリカの代表との交渉が予定されていたにも関わらず、シオニスト国家はイラン側の交渉担当者であった3人のイラン軍幹部と、原子力分野の科学者9人を暗殺し、戦争の道を選びました。その上、レバノン、シリア、イエメンへの爆撃、ガザでの1日100人ペースでの殺戮も続けています。

 それでも、アメリカを中心とする西洋諸国は、イランをテロリスト国家として、シオニスト・アパルトヘイト政権のイスラエルを「中東唯一の民主主義国」として描き続けようとしています。

 欧米諸国の政治家たちの姿は、レギオンに取り憑かれた男の姿と重なります。

1世紀のユダヤ人は、自分たちを支配するローマ軍のことを「豚」と呼んでいました。レギオンは、ローマ帝国の政治と経済を支配する、悪の力でした。豚に乗り移ったレギオンが滅びる様は、ローマ帝国の滅びを、その支配原理の終焉を象徴しています。

 ところが皮肉なことに、歴史が下って、今度は自称キリスト教国の西洋諸国と、シオニスト・ユダヤ人たちが、レギオンに取り憑かれることになりました。

シオニズムは、その初めから、大英帝国の植民地主義の延長で、嘘と、略奪と、パレスチナ人の民族浄化無しには実現しえないプロジェクトでした。シオニスト国家は、パレスチナ人の墓場の上に建てられた国です。それは裸の王様の国です。

 ところが西洋諸国は、中東系の人々やイスラム教徒を「テロリスト」として描き続けることで、裸の王様を守ろうとしてきました。

 しかし今や、世界中の人々が、西洋の帝国主義とシオニズムを支えてきたレギオンの束縛から解放され、正気を取り戻しています。

恐らく、私だけではなく、日本のクリスチャンの多くは、戦後これまで、「欧米より」の立場を取り続け、法治主義と人権擁護という西洋のプロパガンダを鵜呑みにしてきたのではないでしょうか。そして、正義を西洋と重ね、中近東を「テロリストがウヨウヨいる地域」と見なすステレオ・タイプを鵜呑みにしてきたのではないでしょうか。

 しかし遂に、裸の王様が裸であることが明らかになり、レギオンが湖の中に沈み、滅びるときが訪れました。

 レギオンによる支配の終わりを認めたくない者たちは、第三次世界大戦という深い淵の中に、私たちを沈めようとしています。

 日本の立ち位置は、西洋シオニスト同盟に取り憑いてきたレギオンが滅びようとしている様子を見ながらも、イエス様に私たちのもとから出て行ってくださいと求めている人々のようです。

自分の信じてきたことが、間違っていたと認めることは、痛みが伴います。勇気が必要です。しかし、誤りに気づくことは、解放の始まりです。そして解放のプロセスの中には、今まで知ることのなかった喜びがあります。

人は過ちを犯す存在です。けれども、誤りを認めて、方向転換することもできる存在です。そして、レギオンから解放された者たちは、解放の道を語り、さらに多くの人々の解放のために働く者とされます。

 ナザレのイエスが、私たちをレギオンから解放し、私たちに正気を取り戻させてくださいますように。

 そして、彼が示された解放の道を宣べ伝える者としてくださいますように。